日本環境感染学会でのポスター発表の様子。多くの方に興味を持っていただきました!
第35回日本環境感染学会総会にポスター展示・発表で参加!
2020年2月14日、パシフィコ横浜で開催された「第35回日本環境感染学会総会」にて、ポスター発表を行なってきました!
当社は、病院清掃・感染対策に関する業界内の研究会である「ホスピタルサービス研究会」の会員です。
今回、会としてはじめての研究発表に取り組みました!
「ありそうでなかった病院清掃マニュアル」がテーマ
──清掃請負と感染管理のアンバランスを解消する取り組み
病院清掃による感染対策効果がアメリカをはじめとする海外で証明されてから年月が経ちますが、いまだにその重要性について認識しているのは一部のICD、ICNをはじめとする感染管理の専門家と、一部の清掃会社が主です。
それは、感染対策を本当の意味で考え、かつ予算上実現可能なレベルの清掃マニュアルが、医療業界・清掃業界共に存在していないことからも明らかです。
そのため、清掃の契約は事務方が握りつづけており、実情は価格と清掃仕様(箇所・頻度)のバランスをとることに終始してしまいがちです。
結果、この業界で何が起こっているかというと
・実際に清掃会社が提供しているサービスが、感染管理上求めるレベルに達していない
・かつ、そのレベルを求めるには請負金額が安すぎる
結果「ICNがモヤモヤを抱えたまま」か「清掃会社が泣きを見る」ということに……
これを解消するべく、清掃を感染対策を軸にレベル分けし、各施設の感染管理担当者がどれだけのレベルを求めているのか、そして、清掃会社が満たせているレベルはどの程度なのかを分析しました。
病院ー清掃間のギャップにバラつき
──担当者間のコミュニケーション・相互努力が鍵
上に示したレーダーチャートは、研究会内の清掃会社が実際に行っている清掃のレベルと、その病院の感染管理担当者が理想とする清掃のレベルを重ねたものです。
比較可能な完全データは16病院分集まりましたが、3パターンに分類されました。
①概ね満たせており、不足・過剰のバランスが取れている。
→A病院のパターンです。担当者間のコミュニケーションがとれており、清掃側で日々改善が図られています。同時に、病院側の感染管理担当が現状を認識し要求レベルを落としている面もあるようです。不足・過剰のバランスがとれているため、契約金額の変更なしに要求を満たせる可能性が高いと言えます。
②概ね満たせているが不足が残っている。
→B病院のパターンです。担当者間のコミュニケーションは取れていますが、優秀なICNのため正しい清掃を深く知っています。結果、要求は高くなるも、予算が追い付かず不足を解消できずにいるパターンです。これを解消するには、契約金額を上げたり、PPE等の消耗品類を病院支給にするなど、交渉が必要です。
③不足・過剰が全体に表れ、バランスが取れていない。
→C病院のパターンです。改善に向けた担当者間のコミュニケーションはほぼなく、すり合わせがなされないままここまできた、というパターン。実際には、このパターンがものすごく多いはずです。これを解消するには、まずは合同ラウンドをするなど、改めてしっかりと話し合いをする場を設けることが重要です。
……と、このように「病院だから要求が高い」「要求が高い病院の清掃はレベルが高い」ということもなく、病院によって、清掃会社によって、理想と現実のレベルやそのギャップは、まちまちだ、ということがわかります。
全てにおいて病院>清掃会社かというと、そうではない。
──業界として、ギャップを埋めていく動きが必要。
病院間、清掃会社間のレベル比較も行いました。こうしてみると、どちらもバラつきが大きいことがわかります。また、病院は要求レベルが高く、対する実際の清掃のレベルは、それを満たせていないことがわかります。
両業界に、なんとなく存在する固定観念として「清掃の感染対策意識は遅れている」というものがありますが、実際に病院の理想平均と、実際の清掃平均を比較すると、ある項目ではそうでもないことがわかります。
それは「CP(コンタクトポイント)洗剤」「便器洗剤」の2項目です。
背景は意外にも簡単に想像できます。それは、洗剤については環境感染管理の先進国である諸外国のものが容易に手に入るから。清掃資材の知識は、資材問屋が仕入れてくるので多くの清掃会社が認識しており、価格も手が届かないほどではないので、多くの清掃会社が使用しているのです。
一方で、病院の感染管理担当者には、洗剤の名称・効果等の情報はあまり入ってきません。
このあたりのアンバランスが、アンケート結果にも表れています。
両業界の専門知識のギャップを埋めていくことができれば、よりよい療養環境につながっていくことは間違いありません。
よりよい療養環境のために、この業界に必要なもの。
──感染管理担当者が契約に関われる「清掃スタンダード」
こうして、清掃と感染管理に関する項目をレベル分けしていくと、両者のギャップが明確になります。
実際に、今回のアンケートを機に、ギャップを埋めるべく話し合いを開始した病院・清掃会社もあります。
しかし、本当は、契約の段階でこの話し合いができれば、初めからよりよい療養環境を、適正価格でお届けできたはずです。今後はそのような業界に変わっていくことが求められるでしょう。
それに向けて、研究会として提唱するのが、清掃の各項目を、感染対策を軸に松竹梅で分類した「スタンダードブック」です。
これが両業界内で普及すれば、感染管理担当者が契約金額も踏まえた交渉をすることが可能になるため、契約の場に入り込むことができます。
清掃会社は、要求されている感染対策レベルとその手法が明確になるため、契約後、清掃による感染対策効果を十分に発揮することが可能になります。
結果、病院としても感染管理が容易となり、WIN-WIN-WINの関係が実現するはずです。
その未来の実現に向けて、ホスピタルサービス研究会は今後も活動を継続します。