№106 関わる事で幸福になる組織づくり

講演

令和7年2月12日㈬

株式会社 三翠園 お客様係&代表取締役社長 中澤 清一 様

 日本ビルメン経営品質協議会を立ち上げ、当社を誘ってくださった四国管財株式会社 元・代表取締役社長の中澤清一様。創業75年の高知最大の温泉旅館『三翠園』のお客様係&代表取締役社長として、四国管財での経験を活かして経営改革に取り組まれています。
 今回は『関わる事で幸福になる組織づくり』という題で、中澤社長の経営の神髄をご講話いただきました。

四国管財での経営改革

 四国管財は父の会社でした。小学生のころには後を継ぐことを自ら決意し、中2のときに父が急逝してからは、母を早く楽にさせたく、その決意を確固たるものにしていました。ですから、1985年に大学卒業とともに四国管財に入社する際はもう夢と希望でいっぱいでした。しかし、そこで目にしたのは、ビルメンテナンス業界という超不人気業界で、働く社員さんが誇りを持てない会社だという現実でした。でも、私は逆にそれを「何でもできるな‼ チャンスだ‼」と思いました。
 そんな雰囲気の社内に、一人燃える社長の倅ですから、完全アウェーの環境です。でも私には社員さんやその家族が四国管財に勤めていることを自慢できるような会社にするという明確な夢・イメージがあったので、めげずに取り組めました。何度も「今までそんなことをしたビルメン会社なんてないですよ」と反対意見が上がりましたが、こんな言葉を聞くと、私はもうダメなんですね…… ますます燃えるんです元気しか出ません! もう興奮してきちゃうんです(笑) 様々な手を打つ中で特に大きな効果を感じたのは、クレームの捉え方を変えたことでした。

クレームは宝の山『ラッキーコール経営』

 当時の四国管財のクレーム件数は、年に5件。これは危険です。なぜなら『クレームが出ない』=『隠してるだけ』だから。クレームは悪いものではなく、会社の弱点を明確にしてくれるもので、改善すれば会社が良くなり成長していきます。だからクレーム対応に力を入れていこう。これが私の提唱する『ラッキーコール経営』です。
 社員さんには『クレームは宝の山』だと宣言し、クレームを『ラッキーコール』と呼び変え、対応のルールを整備しました。現場でクレームが出たら担当者は5分以内に本社に連絡、それを受けた本社は1分以内に対応を開始し、すぐに現場に駆けつけるというルールでした。よく状況把握してから動き出したいという人もいますが、バタバタとうろたえながら対応していいんです。緊張しているさまは相手に対する最大の敬意でもあります。結果「この会社、ちゃんと対応してくれる!」と信頼につながります。
 この手法に自信がついた決定的な事件があります。ある病院のお客様で、契約窓口の事務長さんが変わった瞬間、クレームが激増。朝・昼・晩と日に3回のクレームで私自身が呼び出されるのが3か月続く異常事態に、とにかくすぐに行って、お話を伺って、改善する、という対応を徹底しました。結果、その病院での売上が3倍になったのです。なぜかというと、当社だけでなく、警備会社など他のあらゆる出入り業者にも、その事務長さんはクレームを言っていたんですね。その中で真摯にスピード感をもって対応したのは当社だけ。当時80万円の契約だった警備会社の切り替えの見積もりを求められ、130万円で出したら即受注! クレーム対応は信頼関係の構築に有効で、信頼関係があれば、金額は関係ない──確信に変わった瞬間でした。
 こうした具体事例を、社員さんにどんどん伝えました。抽象的な話では伝わりませんから「○○病院の事務長の○○さんが」「○○銀行の○○さんが」と、社員さんがリアルにイメージできるよう具体的に伝えました。
 また、クレームの元をたどれば労働条件やストレスなど、全部会社が、マネジメントが、社長である私が悪い。社員さんはその被害者だから、悪いことは隠す必要はないと研修で伝え続けました。

 こうしてクレームやミスを隠さない風土に変わっていき、年間5件しか報告されなかったクレームが、20年間で5000件を記録するまでになりました。内85%は自己申告で、多くが黙っていればバレないようなものです。クレームによる契約解除は20年間ゼロ。逆にお客様の口コミでどんどんお取引が増えました。

三翠園の経営再建へ

 2019年、四国管財の社長を退任しました。社員さんのためには、会社は持続可能でなければならないという思いがあり、東京美装グループ様の傘下に入ることを決めたのです。退任後は会長職に就きましたが、なんだか退屈で「もう1回生まれ変われるなら、また社長業をやりたいな」と思っていたところに、地元の老舗の三翠園が経営再建中で、社長をやらないか?という話が舞い込んできました。「やり残したことをやれるチャンスや」という直感で、「やります!」と即答しました。
 就任してすぐ、全社員さんに向けて「みんなを幸せにする経営をします。それ以上のことはしません!」と宣言しました。社員さん全員ドン引きでしたね。四国管財入社時と同じく完全アウェーの環境です。興奮しますね(笑) でも、これが改革の一番のポイントです。経営を立て直すには、旅館の価値を上げないとアカン。価値を上げるには、まず働く人が幸せじゃないとアカン。これは四国管財で私が学んだ経営の神髄です。だから社員さんとの面談で「何を変えたらもっと働きやすくなる?」と徹底的に聞き回りました。
 結果、やはり会社、マネジメント、経営者の問題だと感じました。提案しても「予算がない」「前例がない」とすべて却下、反対意見を言えば報復人事…… これらが原因で、社員さんは「何を言っても無駄」と思うようになったのがわかったのです。しかし、そんな中でも希望はありました。多くの社員さんが三翠園で働いている理由を「宿泊業が大好きだから」「三翠園が好きだから」と言うのです。四国管財とは大きな違いです。
 好きの伸びしろはものすごいですから、いけると思いました。

働く人を大切にする会社は、お客様からも選ばれる

 社員さんたちはそんな思いで頑張っているのに、あらゆる面で報われない環境でした。第一に待遇。サービス残業は当たり前、月7日しか休めない…… それでは人は定着しません。休みを増やしてサービス残業も禁止。派遣社員が多かったので60名を採用。社員さんとその家族向けに温泉を無料開放したり、花火大会の特等席を設けたりと、とにかく社員さんを大事にして「ここで頑張りたい!」と思える会社にしていきました。
 第二に、お客様との関係。価格の安さが待遇の悪さにもつながっていました。四国管財では『自社のお客様はこういうお客様だ』と定義していましたから、三翠園でも値段ではなく、三翠園に価値を感じて選んでくれるお客様に的を絞り、昔ながらのおかしな・不利益なお付き合いをどんどん切って、お客様の声をもとにサービスの価値を高めていきました。
 第三に、環境。フロントは雑然とし、倉庫には何十年も使っていない荷物が山積み。何をするにも「前からこうだった」が口癖の風土を破壊するためにも、4tトラック 8台分の不要物を一気に処分しました。その過程で、三翠園の歴史をまとめたパネルなど、ブランディングに使えるものもどんどん出てきて、三翠園の風格を上げることにもつながったのはうれしい誤算でした。
 このようにとにかく『社員さんが幸福に働ける旅館』を目指して経営改革を進めました。結果、楽天トラベルの評価は 3.8 から 4.4 にまでアップ。関わる事で幸福になる組織づくりをすれば、おのずとお客様満足につながり、経営が上向く好循環サイクルが生まれるのです。ここで満足せず、予約が取れない人気旅館にしようと、みんなで顔晴っていきます‼

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